香川には、六百数十軒のうどん屋があると言われています。
一軒、一軒の麺は自家製でそれぞれ違います。お店のシステムも違います。
香川県をうどん博覧会の会場とみなして、一軒、一軒がパビリオンです。
六百数十軒のパビリオンを、巡ってください。
讃岐うどんの魅力
当然のことながらおいしいからこそ讃岐うどんの始まりがあります。
うどんのこし、讃岐うどんの味の決め手は“こし”にあると言われています。”土三寒六常五杯” 一杯の塩に対する水の割合です。(土用など夏期は1杯の塩に対して水を3杯加える、寒中の冬期は水を6杯にするという言葉)
塩加減、水加減により麺の硬さが決まります。讃岐うどんを名乗る上にはこの割合を熟知すること。手打ち風であること。熟成は2時間以上する事、等が挙げられます。
うどんのこしは、茹でて水でしめた時が最大の時で後は分単位で衰えてゆきます。ですから茹で上がりすぐの麺のこしが一番強いわけで、この麺をいただくのが一番なのです。そのためには茹でてすぐ食べていただき次の麺をゆでると言う作業が必要なわけです、香川県のうどん屋でしか出来ない芸当です。
香川県民のうどん消費量は、日本一なのはご存じだと思いますが、その消費量は他県を圧倒しています。うどん消費量第2位の埼玉県の約二倍食べると言われています。これほどうどんを愛しうどんを食べる県民はいないのです。2時間たつとこしの強さがが3分の1になると言われています、だからゆで上げて2時間たった麺は使わない、お店の中には時間がたったので売り物にはいたしませんのでご自由にお持ち帰り下さいと、冷蔵庫の中に入れてハリガミをしているところもあります。
うどんの“こし”とは硬さと粘り強さの相関図です。このバランスが少し違う事で食感が違います。讃岐うどんは、このバランスで大雑把に分けて3タイプの麺があると言われています。麺の硬さが強い“かな泉系”昔懐かしいうどんの食感の”宮武系“少し優しい柔らかめの”なかむら系“ではないかと思います。
うどんのだしには、瀬戸内特有のイリコを使います、濃厚なだしは主張の強い手打ち麺との相性がよく、いろんなトッピングを載せて食べる讃岐うどんには最適です。ネギとショウガの薬味も欠かせない、イリコの臭みが消えて爽やかな風味がうどんを引き立てます。香川県内には六百数十軒のうどん専門店があると言われています。その大多数のお店が自店で麺を作っています、ですから六百数十種類の麺がある訳です。
また食べ方にも、かけ、ぶっかけ、釜揚げ、釡玉、しょうゆ、ざる等と色々な食べ方があります。自分に合った麺と食べ方を探すのも、讃岐うどんの楽しみです。
まず都会の人が香川のうどん屋に行き感心することは、こんな場所で商売が出来るものだと思われるところにうどん屋がたくさんあること。この十年いろんな雑誌、メディアが讃岐うどん店人気のランク付けを行って来ましたが、上位に顔を出すのは決まって地方にあって、こんな場所でこんなお店でと思われるお店です。
まず場所、四国山脈の麓にある谷川米穀店、看板もなく出し汁もなく、素朴な麺にしょうゆをかけるだけのお店なのに、いつもベスト5にはいっています。
カーナビがなければ初めての人はたどり着くことが難しい山の中にある、“やまうち”
初めて訪れたら雑貨屋ではと、入店をためらう”須崎”。
細いみちの奥にある”がもう”。
なぜか田舎のすみにある店に長蛇の行列ができる、”山越”
製麺所なのに昼時1時間だけ一般客にうどんを食べさせる”日の出製麺所”
軽いカルチャーショックを受けます。香川県ならではのお店の形態です。
それ以外に観光客が来ないお店でも昼時のうどん屋さんは香川県民の昼食場です。昼時になると店員さんが忙しく麺をゆで上げ、茹であがったばかりの麺を次から次へと来店するお客さんにお渡しする光景がたくさんのうどん店で見る事が出来ます。
五軒食べ歩いても千円前後というお店を紹介いたしましたが、その他のお店もそれ程の違いはありません。かけの小が一般店で200円~250円程度です、トッピング(天ぷら等)が1点80円~120円ですので、ワンコイン(500円)でお釣がきます。
この安さがあるので、香川県民の昼食に大人気なのです。低価格で大量消費、朝早くから14時ごろまでの営業が大多数です。朝食、昼食、おやつ代わりで消費されます。
セルフ形式の店が圧倒的で、人件費の抑制、客の回転率の向上、昼時行列が出来ていても他業種の食堂と違うのは、回転の速さです。一人のお店の滞在時間は、データ―を取っていませんが私が見ていても、短いと思います。
お盆を持って麺をもらい、トッピングを取り会計をする、そのあとネギ、ショウガなど薬味は自分で入れる、ツルツルと頂いて食べ終わった食器を返却口に返す、ザット10分から15分程度でしょうか。うどんは、香川県ではファーストフードなのです。